2024-01-01から1年間の記事一覧

触らぬ神に祟りなし

道場の後輩に、普通に幽霊が見えるという男がいる。普段はそんな話はまったくせず、そぶりにさえ見せないが、「どうせ本気にしてはもらえないし、変な人間だと思われるのも嫌だから」だという。 彼によれば、ごく自然に道路わきに立っているのを見かけること…

金魚はフナの仲間

水槽に飼っている金魚の巨大化が止まらない。女房の友人が「金魚って入れ物の大きさまで成長するのよ」と言っていたらしいが、だんだんと本当のことらしく思えてきた。 最初は小さな金魚鉢でも十分だったのが、30センチ水槽に変えて、今は45センチ水槽になっ…

人生後半の仕事

あの時は、勢いで仕事を辞めたものの、少ない貯金はたちまち目減りしていった。何とかしなければならない切羽詰まった状況となる。Aのブラック企業を辞めてBのブラックへと移ったところで大差はない。中途で入ってきたサラリーマンの悲哀は嫌というほど目に…

リアルな夢

明晰夢というのだろうか。これは夢だという意識を保ちながら、石造りの街中を歩いていた。中世のヨーロッパのような印象でありながら、全体的に建物の高さが高く、その高い位置を歩道が縦横に走っている。 不思議な世界に来たものだと感じながら下の方に降り…

時間と感覚

楽しいことをしている時間はあっという間に過ぎ、嫌なことや退屈なことをしている時間は長く感じる。今の職人仕事をしているときの時間は立つのが速いが、会社でデスクワークをしていた頃はとても長く感じた。 この時間が延び縮みするという感覚は、錯覚では…

人生後半の心得

どれだけ時間を無駄にしてきたことか、それがわかっていてさえも人は急には変われない。他人様というよりは自分のことだ。ついつい日常の安易なほうへと引きずられてしまう。 そうしているうちにあっという間に50年以上が過ぎた。信じられないことだと思う。…

学生のバカ騒ぎ

神戸大学のサークルの学生が、合宿先の旅館の障子を破るなど迷惑行為をした動画がインターネットで拡散、批判が殺到し、神戸大学は「本学学生による不適切行為がSNS上に掲載され、大変ご迷惑をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます」と謝罪した。…

職人とたばこ

職人は、よくたばこを吸う。古い職人も若い職人も、年齢に関係なくいつもたばこを吸っている。休憩時間は必ず吸っているし、トラックでの移動中も吸う。だから一日彼らと一緒にいると、体中がたばこ臭くなってしまう。 これについては仕方がないかと諦めてい…

面白い時代

日本という国はありがたいものだ。政治家が馬鹿でもこうして成り立っている。だが実際のところ彼らは馬鹿ではない。たまにルーピー鳩山やその次に出た最低の男のように本物の馬鹿が登場するが、馬鹿に見えてもなかなか優秀な人が多い。さすがは政治家だと思…

タヌキの出現

田舎の実家の周辺にタヌキが出没し、近隣の兼業農家の農作物が食い荒らされているらしい。そういえば昨年末に帰省した時に、隣のじいさんがタヌキの子どもを捕まえたという話は耳にした。 近くに里山もなく、ひたすら平坦な田園地帯の集落の中に実家はあるが…

大学というもの

今年も受験シーズンが終わった。希望する進学先へ合格、不合格と悲喜こもごもだ。息子2人の受験もすでに過去のものとなった。あとは無事に卒業してくれればいいがと願う。 子どもを大学へ行かせるのは何のためか。第一に自分が親にそうしてもらったからだ。…

歴史は変わる

むかし歴史の教科書で習ったことがどんどん変化している。たとえば明智光秀の評価などはずいぶん変わった。以前は主君の織田信長を殺した悪人でしかなかったかのが、実は非常に優れた武将であったと再評価されている。歴史的事実は変わらなくても評価が変わ…

カラスの灯篭

上野公園から不忍池のほうに斜めに降りていく細い石段がある。目立たないが緑に囲まれて、なかなか雰囲気のある階段だ。朝そこを下っていくと、斜面側の手すりの石のポールの一つ一つにカラスがとまっていた。 ふだんあまり人が通る時間帯でもないのだろう。…

チャドクガの置き土産

仕事が休みなのに首筋に異変が生じ始める。ひりひりとした痛みにかゆみが伴う嫌な感じだ。これはもしかして、しかし、まさかと思う。今は冬季だと思って完全に油断していたのがいけなかった。 思い出せは異変のきざしは昨日からあった。無意識に何度も首筋に…

一服の効用を知れ

職人仕事を始めてなるほどと感心し、学んだことの一つに絶妙な休憩の取り方がある。一応休憩時間というのは決まっているのだが、それほど疲れていないようなときでも時間が来ると必ず一服する。 時間に追われて仕事をしてきた自分のような人間からすると、最…

屍のポーズ

週の後半になると体に疲労が蓄積してくる。だから自然と眠たくなる。現場から事務所に戻る車の中で寝て、仕事が終わって家に戻ると遅い夕飯までの間に寝る。それから少し夜更かししてからまた朝まで寝る。 朝は5時台に起床と早いが、実に健康的な生活をして…

植木屋の技量

本物の植木屋の技量とは、果たしてどのようなものだろうかと思うことがある。自分だって植木屋で5年も働いて、一応はプロとして生活しているわけだから、今さら本物も糞もあるかという気もするが、たまたま業態として成り立っているだけで、その道を究めたプ…

横浜の料亭

横浜市の郊外にある料亭に樹木の手入れに行った。ここも遠い、そして現場が広い。前庭、裏庭があり、竹林があり、裏山まである。だから一度に全部を手入れすることはない。今回は前庭、次は裏庭と、年何回かに分けてやるのだ。 50代の新人たちは、今回もまた…

近藤勇の墓

JR埼京線の板橋駅前に近藤勇の墓がある。以前、派遣の仕事で待ち合わせていた時に偶然に見つけた。近藤勇はこの場所で斬首され、首のない胴体だけがここに埋葬されている。首はどこに行ったか分からないそうだ。 駅を出て、神社らしいのがあるなと思って近づ…

イモリとヤモリ

九州大学の一般入試でイモリとヤモリの出題ミスがあって、その結果11人が追加合格となったようだ。この11人はイモリとヤモリに生涯感謝し続けることになるだろう。かつてお世話になった大学だが、とんでもない辺鄙な場所に移転して、受験生からも敬遠されて…

明日は雨らしい

天気予報によれば明日は雨らしい。雨が確実なら仕事は休みとなる。親方はその方針で明日はほぼ間違いないだろう。天気予報にしたがって明日の仕事をどうするかという判断は、親方がいつも頭を悩ませているところで、ほかの職人たちは期待と不安の入りまじっ…

要するに日記か

いつの間にかブログが40回を超えていた。習慣にすれば書くことはそれほど苦痛ではない。日々思ったり、考えたりしたことを忘れないように書くだけなのだから。要するにこれは日記なのだと改めて思う。Diaryというのが最初からついていたのだからこれでいいの…

果たして大丈夫だろうか

われらが植木屋も去年の年末以来、事務所の強制的な移転、古い職人たちの離脱といった激震に見舞われたが、この3月で新人2人が加入しようやく陣容もととのった。難点は親方の70代を筆頭に、残りはすべて50代という恐るべきロートルな集団となってしまったこ…

土曜深夜の楽しみ

翌日の仕事の心配のいらない土曜日の夜ほど気持ちの落ち着く時間はない。しかも深夜1時からは新日本プロレスの地上波放送がある。女房にも誰にも邪魔されない自分だけの時間だ。ただしテレビの音量は限りなく小さくしている。 昔はプロレス中継と言えば、土…

50代のガキたち

世田谷区に豪邸のある某社長の別荘が伊豆にあって、そこの樹木の手入れをするのが今日の仕事だった。うちの植木屋が請け負っている仕事のうち、もっとも遠い場所がこの伊豆の別荘だ。 途中に渋滞もあって、片道3時間半でようやく目的地に着く。相模湾を見下…

ヘルダーリン

また一つ忘れていた懐かしい名前が、読んでいた本の中から目に飛び込んできた。ドイツの詩人ヘルダーリン。 ゲーテやシラーほど有名でもないが、学生時代の指導教官の一人がこのヘルダーリンが大好きで、ことあるごとにヘルダーリンの詩を持ち出して話をして…

ハヤ・サンジ

最初に親方の口からハヤサンジという言葉を聞いたとき、何のことだか当然わからなかった。誰か人の名前なのか、造園業界の特別な用語なのか。その日はとても暑い日で、午後に入った時点からみんなもうへたばっていた。 造園業は庭仕事で、休憩時間に涼めるよ…

手に職への道

パソコンやスマホ一つで仕事ができるような時代となって、昔ながらの手に職といった感じの仕事はどこまで生き延びていくことができるのだろうかと思うことがある。 植木屋のような職人仕事も、以前とはだいぶ仕事の形態が変わってきたようだ。昔ながらのこつ…

鎌倉

鎌倉の現場だった。東京から鎌倉まで往復して、その間に肉体労働をするのはなかなかしんどい。せめて現場は23区内に限ってほしいものだが、親方の知り合いらしいから仕方がない。 司法書士の事務所から流れてきた54歳の新人は、小学校の修学旅行以来の鎌倉だ…

職人の休日

今日もまだ外仕事はきついなと思っていたら、都合よく雨で現場が中止になってくれた。現場があっても仕事のやりようはあるのだが、腰の回復にはあと2、3日かかる。現代のしかも東京という大都会の中で、雨で自然と仕事が休みになるというのは造園業くらい…