一服の効用を知れ

 職人仕事を始めてなるほどと感心し、学んだことの一つに絶妙な休憩の取り方がある。一応休憩時間というのは決まっているのだが、それほど疲れていないようなときでも時間が来ると必ず一服する。

 時間に追われて仕事をしてきた自分のような人間からすると、最初のころはともかく、体力もつき仕事に慣れてくると、それがもどかしくてたまらない時期もあった。今でも少しは、いや多分にそんなところがある。

 現場によってはもう少し効率的に仕事をやって、休憩時間も短くして、さっさと仕事を終わらせてしまったほうがいいのではないか、どうせ帰ってからの事務仕事もあるのだからと思ったりしていたが、要するに仕事というものは慌ててやってもダメなのだ。

 休憩というよりも、良い仕事をするために必要な間をとっているのである。外仕事というのは危険と紙一重なところがあるから、一息入れることで頭をすっきりさせ、気分を一新させて、大きな怪我が発生したり、仕事のミスが起こったりすることを未然に防いでもいるのだ。

 一見怠けているように見えるかもしれないが、休むのも仕事のうちということで、長年の職人の知恵というか文化がそこにあるのを感じた。いわば一服の効用ということを、昔の職人たちはよく知っていたのだ。

 自分の性格として、コンサル仕事をやっていた頃もそうだったが、今でも出来ることは一気にやってしまわないと気が済まないところがある。それで自分で自分を追い詰めていたこともあったのではないか。ブログの書き方にしてもそうだ。

 こうして職人たちの職場に投げ込まれたのも、少しはペース配分というものを考えて仕事をしろと、そういうことを学習させられているのだという気もする。