植木屋の技量

 本物の植木屋の技量とは、果たしてどのようなものだろうかと思うことがある。自分だって植木屋で5年も働いて、一応はプロとして生活しているわけだから、今さら本物も糞もあるかという気もするが、たまたま業態として成り立っているだけで、その道を究めたプロには程遠い。

 確かに素人には出来ない仕事をやってはいる。5年以上前に、自分がこの業界に飛び込んだ時には、とてもあんな真似は出来ないと思ったことを今は平気でやっている。今また新たに新人が入ってきて、彼らの道のりがはるか遠いことを感じるのも事実だ。

 昨年末に辞めた古い職人たちもいたが、3年目くらいには知識以外の実技の部分では同じくらいのレベルに達していた。4年目くらいには、仕事の一番難しい部分も任されるようになっていた。

 これを踏まえると、だいたい3年かければ今の仕事をこなせるレベルには到達できるということになる。親方のレベルを見ても似たようなものだ。ただし植物その他諸々の仕事の知識に関しては誰もかなわない。

 厳密にはそこも含めての技量なのだが、仮に武道の段位に当てはめて考えれば、自分ではようやく3段か4段くらいではないだろうかと思う。やめていった古い職人で4~5段、親方で5~6段といった感じだろうか。

 これは元請けに求められている仕事のレベルや、うちが直接持っている個人邸のお客さんの求めているレベルと、金銭的な面も含めてちょうど釣り合ったレベルだということでもある。

 恐らく7段、8段、9段というレベルで仕事をしている植木屋さんも世の中には多いと思うが、残念ながらそういう方々と交わる機会はない。客層も違えば、そういった植木屋は上のレベルで交流しているのだろう。

 我々ががふだん交流し、助っ人に呼んだりするのは、似たような客層で少しばかり高木を専門にしている植木屋だ。中には一人親方でやっている人たちもいる。最近は独立したばかりの、30代くらいの若い植木屋を呼ぶことが多い。

 彼らを見ていると、最初はどこかの植木屋に所属して、何年か修行して、だいたい4段くらいのレベルに達したときに独立しているようだ。あとは一人で苦労しながら自分なりのスタイルを確立していくようである。