屍のポーズ

 週の後半になると体に疲労が蓄積してくる。だから自然と眠たくなる。現場から事務所に戻る車の中で寝て、仕事が終わって家に戻ると遅い夕飯までの間に寝る。それから少し夜更かししてからまた朝まで寝る。

 朝は5時台に起床と早いが、実に健康的な生活をしている。この最後に寝るときは、枕に頭をつけて仰向けになり、足をやや広げて手は両脇にだらりとしたままの姿勢で、そのまま朝まで寝ていることがある。これはヨガで「屍のポーズ」というらしいが、本当に朝までそのままの格好で寝ているのだ。

 植木屋の仕事をする以前のことを思い出しても、こんな風によく眠れたような記憶はない。体を右にしたり、左にしたり、枕の位置が気になったり、それ以前にいつもいろんな思いが頭を離れず、眠りも浅かったような気がする。

 今思えばやはり心身が限界に来ていたのだろう。会社もまた無理して仕事をこなせばこなすほどに、さらに数値の拡大だけを目標とする典型的なブラック体質だった。同僚が次々とやめたり死んだりしていく。何よりももう無能な公務員を相手に仕事をすることにうんざりしていた。

 49歳で仕事を辞め、派遣で日雇い労働を転々としながら、ある人の紹介で今の植木屋にたどり着いた。あれから5年以上がたつ。この間に息子2人を何とか大学に送り込んだ。もちろん女房の働きもある。しかし、いざとなれば体一つで何とかなるものだ。「屍のポーズ(シャバーサナ)」とは死と再生を意味するらしい。