横浜の料亭

 横浜市の郊外にある料亭に樹木の手入れに行った。ここも遠い、そして現場が広い。前庭、裏庭があり、竹林があり、裏山まである。だから一度に全部を手入れすることはない。今回は前庭、次は裏庭と、年何回かに分けてやるのだ。

 50代の新人たちは、今回もまた興味津々という感じでついてきた。ついてきたと言っては失礼になる。彼らも職人として参加しているのだから。今はまだ、毎回新しい現場に行くことになるから、物珍しさの方が勝っているようだ。そのうち現場の名前を聞くだけで憂鬱になったりする場所もある。

 今回の料亭は裏山の管理だ。生い茂った樹木の、とくに料亭の屋根にかぶさってきた部分を中心に枝葉を落としていかなければならない。さらにそれをトラックの荷台まで運んでいくのが一仕事だ。

 こういう大きな現場の場合は、うちの植木屋だけでは手が回らないから、知り合いの植木屋から助っ人を呼ぶことになっている。だいたい一日では終わらないから、何日か通うことになる。時にはクレーン車やユンボを呼んで、かなり大掛かりな仕事になるときもある。今回は木登り職人を何人か呼べば済む程度だ。

 遠目には原生林が生い茂ったような山なのだが、中に入ってみると、かつてここに家が建っていた痕跡が上の方に残っている。それほど古くはないから、たぶん20~30年くらい前のものではないだろうか。ああこんな荒れ果てた山にもかつては家族が住んでいたんだなと思うと感慨深いものがある。

 山の手入れで大変なのは、ひたすら斜面を移動しなければならないことだ。しかも重い樹木の切れ端を引きずりながら。新人たちは午前中の休憩を待たずにへたばってしまった。無理もない。

 もともとそんなに当てにはしていなかったから、あとは出来ることをやってもらって、慣れた人間だけで黙々ときつい仕事をする。こんな感じの仕事がしばらくは続くだろう。彼らが仕事に慣れるまでは。