職人の休日

 今日もまだ外仕事はきついなと思っていたら、都合よく雨で現場が中止になってくれた。現場があっても仕事のやりようはあるのだが、腰の回復にはあと2、3日かかる。現代のしかも東京という大都会の中で、雨で自然と仕事が休みになるというのは造園業くらいではないか。

 われわれも合羽を着て、ずぶ濡れになりながら仕事をするというケースもあるにはあるが、木や脚立から滑って落ちたり、周りが見えずに通行人とぶつかったりという危険があるため、現場によっては無理をしない。

 個人邸や洒落たマンションの場合は、泥靴で歩き回られたら庭や通路が汚くなるからと、現場の方から中止を申し入れてくる場合もある。では、そうして中止となった仕事の分をどこで補うのかというと、土日祝日のどこかで埋め合わせをしなければならない。だから結局は同じことなのだ。

 ともあれ体調がよくない場合に、こうして現場が中止になってくれるのは有難いの一言に尽きる。しかし実は、有難がっているのは自分一人ではない。うちは70代の親方を筆頭に、全員が50歳以上という高齢の職人集団だ。平均年齢はちょうど60歳くらいだろう。どうにかするとシルバー人材センターかと見まごうほどである。

 たった5年前はこうでもなかったのだ。みな平均して年齢が5歳は若かったし、まだ30代の元気な男もいた。職人というのは、たまに忍耐強い人間もいるが、基本的にはわがままな人間が多い。だから職場の流動化が激しい世界だ。それでも急激に高齢化したのは最近のことである。

 こんなに高齢化してくると、どこかに持病を持っていなかったり、自分のように腰や足に痛みを抱えたりしていない人間がいないわけがない。中にはギャンブル中毒になっている者さえいる。週の半ばに休みが入ったりすると正直なところ、みな「ああ、助かった」と思うのだ。

 せっかくこうして休みになっても、7割がたの職人は競馬かパチンコか、あるいは酒を飲んで過ごす。あとは動画を見るか、寝て過ごす。二日も休みが続けば、体を動かしたくなってうずうずしてきて、早く現場が始まらないかなと思ったりする。そんな感じで人生を過ごしているらしい。