イモリとヤモリ

 九州大学の一般入試でイモリとヤモリの出題ミスがあって、その結果11人が追加合格となったようだ。この11人はイモリとヤモリに生涯感謝し続けることになるだろう。かつてお世話になった大学だが、とんでもない辺鄙な場所に移転して、受験生からも敬遠されて、偏差値も下落し続けているらしい。また盛り返すことがあるのだろうか。

 さて、イモリとヤモリの違いはとなると、正直言って自分でもよくわからなかった。ヤモリは分かる。九州の実家の窓ガラスに張り付いて小さい虫を食べているのをよく見たし、この東京23区でも、造園の現場でマンションの壁の目立たないところに、白っぽいのがじっとしているのをたまに見る。

 だがイモリは、これまで見たような記憶がない。ヤモリの別名がイモリというのだろうかと勘違いしていたくらいだ。調べてみるとイモリは両生類で、ヤモリは爬虫類だということだ。見た目もイモリは体が赤っぽくて何だか泥臭い感じだ。ヤモリの方がずっと上品である。

 ちなみに、イモリは水の中に棲んでいて井戸を守っているから「井守」、ヤモリは家の中に棲んでいて家を守っているから「家守」ということらしい。なるほど、イモリを見かけないのは、今どき井戸のある家などほとんどなくなったためでもあるようだ。

 出題ミスがあったのは生物の問題らしいから、たかがイモリとヤモリとはいえ、無視するわけにはいかなかったのだろう。これが文系の国語の問題だったら、イモリだろうがヤモリだろうが放っておいても問題なかっただろうに。あるいは「ヤモリが水の中にいました」だったら、気づく人が一人くらいはいただろうか。