人間関係

 東京に三十年以上住んでいるが、ずっと賃貸暮らしのためか地縁というものはない。あるのは趣味の活動である道場を通じての交流のみだ。もちろん仕事での付き合いはあるが、それだけで十分だ。

 しかし、趣味の活動の団体に1つでも所属しておくと、多種多様な人が集まってくるから、意外に人間関係も広がっていく。フェイスブックなどを使えば際限なく広がっていくから、むしろ制限しなければ個人の時間が保てなくなる。

 浅くて広い人間関係など必要とも思わない。かえって煩わしいだけだ。だいたい人と付き合うにしても半年、1年たってようやく相手の実態というか本年のようなものが見えてくるものなのだから、焦って仲間になる必要はない。

 そうやって5年、10年と過ぎていくと、本当に長く付き合える人間関係というのが自然と出来てくる。

 そうして親しくなった人たちとも、べたべたと付き合う必要はないのだ。むしろ一定の距離感をもって親しい関係でいられるというのは理想ではないだろうか。

 そこまで親密でなくても普段ときどき顔を合わせるような人たちとは、失礼のない程度にあいさつを交わし、孤独死でもしそうになった時は「あの人最近見ないね」と、気づいてもらえるくらいの関係になれたら十分だ。