50代のガキたち

 世田谷区に豪邸のある某社長の別荘が伊豆にあって、そこの樹木の手入れをするのが今日の仕事だった。うちの植木屋が請け負っている仕事のうち、もっとも遠い場所がこの伊豆の別荘だ。

 途中に渋滞もあって、片道3時間半でようやく目的地に着く。相模湾を見下ろす山の斜面にその別荘はある。行って帰ってくるだけでも大変だが、年に1回の仕事で途中の景色もいいので、行く前はおっくうだが行けば行ったで気分が晴れやかになる。

 しかし平均年齢が60歳に近い5人が1台のトラックで、現場仕事のために長旅をするのだ。最年長の親方が70代、残りはすべて50代。日本の造園業の現状がこれでいいのだろうか。これも一種の7050問題というべきではないだろうかという気がした。

 50代のうちの2人は新人である。新人の2人は初めての伊豆に浮き立っていた。つられてベテラン勢もついはしゃいだような気分になる。50代の男4人が、遠足に行く小学生のガキの集団のような感じになった。

 みなそれぞれに前職があって、役職もあり責任もある仕事をしてきたであろうに、そうした気負いも足かせもなくなって、一介の肉体労働者でしかない気楽さが前面に出てきたかのようである。

 男というものは、こうしてみると、社会的な対面や体裁といったものをはぎ取ってみれば、年齢や見た目に関わらず、中身は小学生化中学生くらいのガキのままなのかもしれない。

 一人70代の親方だけが、あまりガキたちの箍が緩みすぎないよう苦虫を嚙みつぶしたような顔をしていた。