近藤勇の墓

 JR埼京線板橋駅前に近藤勇の墓がある。以前、派遣の仕事で待ち合わせていた時に偶然に見つけた。近藤勇はこの場所で斬首され、首のない胴体だけがここに埋葬されている。首はどこに行ったか分からないそうだ。

 駅を出て、神社らしいのがあるなと思って近づいたら、まさかの近藤勇の墓だった。古い石の門柱があって、そこを入ると空気が違って感じられた。むき出しになった土の部分から、当時の生々しい気配が漂ってくる。

 斬首されたというから切腹はしなかったのだろう。土壇場に引き据えられた近藤勇の体から首が離れ、胴体が前倒しになる光景が見える。まだ若くてたくましい肉体だ。享年35歳だったというから無理もない。

 盟友の土方歳三も同じく35歳で、函館戦争で亡くなっている。沖田総司はたった25歳。こちらは結核だが、短く激しい生涯をおくった人たちだ。

 とくに新選組のファンでなくても、ついこの人たちに惹きつけられてしまうのは、それぞれが剣の達人であった上に、鉄の規律を持った組織をつくり上げて、幕末の京都を震え上がらせた事実だろう。

 新選組という組織をつくり上げ、陰で支配していたのは土方歳三だと思うが、表立っての顔は局長の近藤勇で、近藤勇にはやはりそれなりの風格と剣の実力があったように思う。

 新選組の中では、本当は誰が一番強かったのかとよく話題になる。これだけの剣豪ぞろいになると、誰かが圧倒的に強いということはないだろうが、実践の場での強さという点では、局長の近藤勇が一番強かったのではないだろうか。

 次いで永倉新八斎藤一が並んで、それから天才沖田総司がくる。もちろん自分の勝手なイメージだ。もう一人、別枠で服部武雄という人も挙げておきたい。この人は新選組に関わらなければ、歴史に残るような剣の達人になっていたのではないだろうかと少し残念に思う。