一人親方と松

 造園の現場に行っていると、たまに一人親方が近くの個人邸で仕事をしているのに遭遇する。お互い、めったに声をかけたりはしないが、休憩時間とかに眺めていると、ゆっくりと丁寧に仕事をしている。

 最近見かけた一人親方の松の木の剪定は、さすがだなと思った。まず枝ぶりがいいのは、長年かけて松をそのように形づくってきているからだろう。

 伸びすぎた部分を思い切りよく剪定していく。松の一番上の部分の枝葉は薄めに、中間部分は少し濃く、下段部分は少し濃い目に枝葉を残すような感じで、セオリー通りにすっきりと纏まりよく1本が仕上がった。

 上の方の枝葉を薄くするのは、上に行くほど枝葉の伸びが早いからで、長さに差をつけて切っておけば、時間がたつほどに全体のバランスが良くなる。こういう風にきちんと仕事をする職人は案外少ないものだ。

 我々のように集合住宅が専門の植木屋だと、個人邸もあるにはあるが、一人親方がやっていたような仕事の仕方はなかなかできない。松の剪定も、全体を均一にしておかなければ逆にクレームが来たりする。

 植木屋として、自分が望むような仕事をしたいのであれば、自分一人で、軽トラ一つに商売道具を積み込んで、一から顧客を開拓していくしかないのかもしれない。そこまでの道のりは、やはり厳しいだろうなと思う。