関東と九州

 九州の学校を出て、さてどこで就職しようかと考えるとき、地元を選ぶ人も少なくないが、東京や大阪に出るケースも多い。自分の同期の例でみると、5対1くらいで東京に来る割合が多いと感じた。

 自分もまた東京に出てきた一人だが、関西というのはどうも言葉や文化が自分ではとても馴染めないような気がして、行くなら東京しかないと思い込んでいた。

 東京に来て、巨大なビル群や地下鉄の複雑さなどには最初圧倒されたが、気候も北部九州と大して変わらないし、さっそくもぐり込んだ下町での生活もすぐに馴染んでしまった。

 九州は関西よりも西にあるのだが、文化的には関東の方が近いように感じるのは、京都を中心としてみれば歴史的にはどちらも田舎だったという過去があるからだろうか。

 今の東京は九州など足元にも及ばないくらいの経済の集積地で大都会だけれども、江戸時代以前の鎌倉や室町のころは、博多の周辺を除けば九州も関東も似たようなものだ。文化の中心は京都や関西だ。

 鎌倉に幕府ができて、武士の時代が起こり、関東がはじめて政治の中心になる。このとき頼朝は、功績のあった御家人を守護や地頭にして、関西を飛びこして九州一円にばらまいている。関西はお公家さんたちの力が強かったからどうにもならなかったのかもしれない。

 そうした御家人の末裔が薩摩の島津氏や豊後の大友氏で、その時の鎌倉御家人文化の影響がずっと残って、鎌倉、室町という中世を経て、江戸時代になっても残り続けて、関東と共通する地盤となって現代につながっているような気もする。