アメリカ人

 本部の道場にはいろんな国から人が来ていて、アメリカ人も何人かいる。一番よく見かける三十代の男は、アメリカ人の平均よりもやや大きめだと思うが、身長は183~185センチくらいで、体重は110~120キロくらいはある。ほとんどプロレスラー並みの体格だ。

 ここまで大きくなくても、アメリカ人やヨーロッパ人で身長180センチ以上、体重100キロ前後というレベルはごろごろいるから、こういう人たちと力でまともにやり合ってはいけないということはよくわかる。

 しかし、彼らは彼らで、わざわざ武道を学びに来るということは、同じ体格の者どうしがやり合っても力の限界を感じるからで、そこを技術で制圧する方法はないかと、できるならお互いが傷つかない方法で収める方法はないかと思っているわけだ。

 アメリカというと、世界最大の経済力と軍事力、科学技術力を持ち、白人優先の銃社会で訴訟社会で、とんでもなく物価が高くて、仮にアメリカを旅行中に入院でもしたら、1当たりの入院費用が何百万円と請求されるとんでもない国だというイメージがある。

 これまでヨーロッパになら旅行に行ったり、武道の交流で行ったりしたこともあるが、アメリカに行こうと思ったことは一度もない。すごい国だということはテレビやニュースで十分にわかっているから、わざわざそれを確認しに行ったって仕方ないだろうという気分だ。

 わざわざ行かなくても、向こうの方からこうして来てくれるから、武道という日本文化を通じての交流くらいはやっている。上半身、腕の強さは大したものだが、足腰の強さはそうは感じない。しかし、大雑把なようでいて緻密だ。相手をよく見て分析し、記録までしている。そのうち武道の動きもテクノロジーで凌駕してくるんじゃないかと思ったりする。