知られざるブラックな仕事

 地方自治体の行政計画や調査を下請けする仕事がある。もうそれだけで何のことやら分からないという感じだが、実際、人に説明したところで分かってもらったためしが無い。霞が関の官僚がやっているような仕事を、市町村レベルでかなりダウンサイズしてやっているわけだ。

 霞が関でも大手のコンサル会社に委託して、行政計画の素案をつくらせているのかもしれないが、そのレベルの仕事まで関わったことがないからよくわからない。せいぜい区とか県のレベルの仕事が最高で、ほとんどは関東から東北にかけての市町村の仕事が多かった。

 行政の計画なんだから、そんなところに税金を無駄遣いしないで、行政の職員にやらせればいいじゃないかという意見も当然あるが、行政も優秀な職員は行政の運営で忙しい。ふつうに仕事のできる職員は、住民への対応や窓口、その他の実務で忙しい。そして仕事のできない職員の分も働くことで忙しい。このへんで職員の6~7割を占める。あとは無能だ。

 コンサル業者として、この無能な職員を窓口として関わらなければならない時ほど悲惨なことはない。何しろ仕事がまったく進まないどころか、マイナスにマイナスにと逆方向に進んでいくのだから。

 何日も徹夜して仕事が、まったく意味のない作業だったりする。そして次の週明けまでにもう一つ違う案が欲しいと言う。当然土日も何もない。そうして出した案も、中身ではなく体裁ばかりを見る。

 一番ひどかったのは、文章の文字と文字の間をモノサシで測りだして、文字の間隔に微妙に違いがあるのが気に食わないとか言い出した。当然そんなのは相手していられないから、こちらも腹を立てると、今度は上司に告げ口をする。すると役所の偉い人から、弊社の社長へと厳しいクレームの電話が入ることになる。

 もちろんそこまでひどい案件は、10件のうちに1件あるかどうかだが、似たようなレベルの役所と関わって亡くなった同業者が、私が知っているだけでも3人はいる。

一人は徹夜作業中に机にうつ伏せのまま死亡していた。もう一人は出張先で自殺。三人目は体を壊して仕事を辞め、そのあとすぐに亡くなったとの知らせがあった。みな四十代の働き盛りだったことが悲惨さに輪をかけている。このうち二人は独身だったが、過労死した一人は妻子がいたのではなかったか。

 この業界に入ってくる人は、「まちづくり」や「地域おこし」ということに興味や期待をもって来る人が多い。そこでいろいろとアイデアを出してコンサルらしい仕事ができるかと思ってくるのだが、実態はこんなものだ。