適度な仕事と余暇

 「気楽に働き、適度な収入を得て、余暇を楽しむ。これが最高の人生だ」と以前の職場の上司が言う。それが実現できれば、その通りだろう。本人も引退したから言うのだろう。現役のころは本社との板挟みで毎日やけ酒を飲んでいた。

 まず気楽に働くということ自体が想像できない。空想ならできるが、ストレスなしの仕事などあり得るのだろうか。これが三拍子そろって実現できるのは、仕事をしない公務員ぐらいしか思い浮かばない。自分で銭を稼ぐしかない身分の人間にはとても無理だ。

 そして「メシのための仕事は楽なことが一番、仕事以外の人生が本当の人生だ」「生活のためだけに働く人生などつまらない」とも言った。今彼は自宅近くのスーパーの駐車場で交通誘導の仕事をしているらしいが、70歳を超えてようやく理想の生活が実現できたのだろうか。

 確かに、70歳を超えれば、年金の片手間に気楽な仕事をして、余暇を楽しむということもあり得そうだ。だが余暇はいったい何を楽しむのだろうか。余暇も楽しみ方を知らないと、仕事がない状態を楽しむというだけになってしまいそうだ。