佐賀城

 九州に帰省したついでに佐賀城に行ってみた。佐賀鍋島藩36万石の居城だ。九州で生まれ育ったといっても、ほとんど家と学校を往復していただけだから、九州のことは詳しいことはほぼ知らないに等しい。

 それでも九州の北部は地元だから土地勘はある。中部も熊本城と別府温泉高崎山くらいは行ったことがある。南部は修学旅行のバスで通り過ぎたような記憶がかすかにあるだけだ。

 今は九州新幹線が鹿児島まで通っているから、その気になれば簡単に行けるが、どうせ行くならじっくりと腰を据えていきたい。そうすると、手軽なところでちゃんと行っていないのは佐賀城だった。

 佐賀は、「都道府県魅力度ランキング」というので、茨城県と全国最下位を争っているようだが、堅実であまり目立つことを好まない県民の気質もあるのではないかと感じる。というよりも、派手な人はさっさと福岡とか東京の方に行ってしまって、佐賀の風土と相性がいい人が自然と残っているのだろう。

 目立たないというのは、佐賀藩の鍋島家のお殿様というのが、代々そういう感じではなかっただろうか。たとえば幕末の鍋島直正という藩主は、傑出した人物でありながら、おそろしく抑制的で、幕府に対して遠慮深く対処しすぎた。

 そんなことを考えながら訪れた佐賀城だが、天守閣などはないものの、見事な本丸御殿が江戸時代の絵図のままに復元してあった。これほど壮大な規模のものだったのかと驚いたが、それでも復元したのは実際の3分の1程度だという。本丸の玄関わきには磨かれたようなアームストロング砲が設置してあった。

 城郭の規模も、石垣の周囲の堀を含んで、一辺が800メートルの驚くほど広大なものだった。佐賀城や佐賀の殿様のことなどほとんど知られていないに等しいのだが、これが36万石の実力かと改めて実感した次第です。