浜離宮恩賜庭園

 浜離宮恩賜庭園に散歩に行った。通常、こんな高級な場所には散歩に行かない。女房が行きたいというから連れて行ったのだ。散歩するときはたいてい一人だが、ときどき女房が同行したいというときは連れていく。

 この前は日比谷公園ガーデニングショーで、今回は浜離宮に菜の花が咲いているから見に行きたいということだった。他には、テレビによく出てくる場所や、ガイドブックに載っているような場所には行きたがる。

 女房はそうやって、目的地を持って行くのが好きらしい。たいていの人はそうだと思うが、自分の場合は目的地を定めずに路地をさまよい、適度に疲れて帰ってくればそれでいいから、女房が行きたい場所があればそこに行くようにしている。

 ただ困ったこともいくつかある。女房は花が好きだが、自分はそれほどでもない。むしろ動物の方が好きだ。だからどうしても退屈してしまう。猫でもいてくれればいいのだが、残念ながら浜離宮に猫はいなかった。

 それから移動中に、女房がアヒルのようにせかせかと歩くことだ。もっとゆっくり歩けというと、「私は痩せたいのだ」という。ここにも目的意識がしっかりと出ている。旦那がいつ仕事を辞めるかわからないような人間だと、自分が目的意識をしっかり持って生活しなければいけないと思っているのだろう。その通りだ。

 それはともかく、歩いて余分な肉を落としたいというのも、女房が散歩についてくるようになった理由の一つだ。あるいはほかに、本当に散歩に行っているのかどうかを確かめようとしたのかも知れないが。

 浜離宮は見事に整備されていて、散歩に来たというよりは観光に来たような感じだった。日曜日だからか実際に観光客も多かった。入り口を入ってすぐ、鮮やかな黄色い一角が見え、菜の花の濃い匂いが漂ってくる。

 以前はなかったような御茶屋の建物が、池のほとりにいくつか復元されていて、まるでおとぎ話の世界のようにも見える。風は冷たいが、日差しは暖かだった。ひとりで散歩するだけだったら、こういう場所にあえて来ることもなかっただろう。