天才の墓

 天才といえばモーツァルトの名前を聞かないことはない。思い出せば、大学の英語の授業で、最初に原文で読まされたのが「アマデウス」というタイトルで、それがモーツァルトのことだった。天才にしてはあまり品がなく、生活にも恵まれず、不幸な死に方をした人間だくらいにしか思わなかった。

 そのモーツァルトが、全然関係のない本を読んでいる時にもまた出てきた。こうたびたび出てくると、一度はきちんとモーツァルトの楽曲くらいは聞いておかないと音楽的教養にかけているような気がしてくる。

 実際、以前クラシック音楽のCDも買って、少しは勉強しようとしたこともあるのだが、それを鑑賞するための感性が足りないらしい。すぐに飽きてしまう。西洋音楽は整いすぎていて性に合わないのだろうか。まだ雅楽を聞いている方がましな気がする。

 せかっくだから書いてあることを読んでみると、モーツァルトは35歳の若さで何ものかに毒殺されたらしい。気の毒なことだ。あまりに天才過ぎて妬まれたのか、あるいは借金癖がひどすぎて債権者の怒りを買ってしまったのだろうか。

 意外だったのは、モーツァルトの埋葬されてる場所が未だに不明であるということだった。ウイーンのザンクト・マルクス墓地という共同墓地に埋葬されていることは確かなのだが、墓石や墓標すらないという。

 モーツァルトほどの有名な天才の墓が不明だとは、これは確かに謎めいた話だ。生前につながりのあった音楽関係者も、コンスタンツェという女房もいて、立派な墓地に埋葬したはずなのに誰もその場所を知らないとは、一体どういうことなのか。

 西洋音楽に興味のない自分のような者でさえ、つい野次馬根性を掻き立てられてしまう話だ。それはともかく写真で見る限りいかにも雰囲気のありそうな墓地だ。いつかウィーンに行くことがあったら、きっとこの墓地を訪れるに違いないと思う。