ニック・ネメス

 新日本プロレスのテレビ放送は、土曜日の深夜25:00からで大変遅い時間なのだが、これを見るのが週末の楽しみの一つとなっている。翌日が日曜日だから、朝いつまでも寝坊していられると思うと、本当に一週間のうちで一番気楽な時間だ。

 一時プロレスがつまらなかった時期もあるが、新日本プロレスのエースである棚橋弘至をはじめ、オカダカズチカや内藤哲也といった世界レベルの選手の活躍で、かつてのプロレス全盛期に近い盛り上がりを見せている。

 ただ残念ながらテレビでの放映が深夜に限られているのと、野球やサッカーにバスケ、ラグビーといったスポーツ選手の活躍が目立って、プロレスの話題が巷に浮上してくることはまずない。

 新日本プロレスの強みは、外国人選手が充実していることもある。ウィル・オスプレイデビッド・フィンレー、ジョン・モクスリー、ジャック・セイバー、ブライアン・ダニエルソンといった選手は、だれが世界チャンピオンになってもおかしくないレベルにある。

 そこにニック・ネメスが登場してきた。ひときわ華麗なオーラを纏ったこの男が出現すると、会場の雰囲気が一気に変わり、大勢の観客の目が息をのむようにくぎ付けになっているのがわかる。

 かくいう自分も、思わず画面に魅入ってしまった。さすが本場アメリカのスーパースターというものはレベルが違う。上にあげた一流選手たちと試合して、圧倒的にニック・ネメスが強いとか、そういうものではない。

 実際に戦えば勝率はもちろんネメスが上回るだろうが、一流選手はみなそれぞれに強いから、紙一重の差だ。その透明な膜のような薄紙一枚程度の違いがローカルなスターと、世界レベルのスターを分けるのだろう。

 そのニック・ネメスだが、日本に新たな戦場を求めるにあたって、ずいぶん下調べもし、自分が本当に日本でやっていけるのか、自分が日本に来ることで、新日本プロレスという会社の発展にどう寄与していくことができるのかと、何カ月も真剣に考えたらしい。

 ネメスはまた、初めて東京ドームの大会に来た時、その規模と会場のエネルギーに圧倒されたこと、そして自分は、実は日本のエースである棚橋弘至のファンであることも明かしている。

 レスラーとしての実力も。ビジネスマンとしての考え方も一流であり、根は非常に真面目で、自分を飾らず、尊敬すべき相手には素直に敬意をはらう。会場に立てば一瞬で観客を魅了する。それがニック・ネメス。