無拍子ということ

 ユーチューブで猫の動画を見ていると、たまに猫が狩りをする様子を撮影したものが流れてくる。ネズミを走って捕まえたり、飛び立とうとする小鳥をジャンプして空中で捕まえたりと見事なものだ。

 一番感心したのは、水辺にじっと座っている猫が、水中から魚が水面に近づいてきた瞬間に、一瞬の早業で前足を伸ばして魚を爪に引っかけ、次の瞬間には魚を口にくわえて去っていった動画だった。

 この猫の動きをみて、ああこれが無拍子ということかと非常に感じるものがあった。武道でも無拍子に打ったり、突いたりしてくる技はかわせない。うつ前の拍子が読めないので、気づいた時には当てられている。もちろん、この無拍子の攻撃ができる人は非常にうまい人なのだが、猫には先天的にその能力があるものらしい。

 ふつう我々は、目で対象をみて、それから手を動かす。そこにはどうしても時間差があり、手を動かそうとする動作が生まれる。その動きを相手に察知されて、逃げられたり、かわされたり、あるいはカウンターで反撃されたりするのだ。

 これが無拍子だと、目で見た瞬間にはもう相手に手が届いているという感じになる。むかしマイクタイソンが日本に来た時に、地面を歩いている鳩を無造作に捕まえる映像があったが、とても真似はできなかった。

 でも普通の人間はそういう能力はない方が身のためかもしれない。そうでないと、手に取ってはいけないものを誤って手に取ってしまったり、あるいは見ているだけなら痴漢行為にはならずに済んだのに、つい手が出てしまって犯罪者になるようなケースも少なくないだろうから。