植物の謎

 植木屋を手伝うようになってようやく気付いたことだが、植物というのは実に謎に満ちている。わずか数ミリから1センチに満たないような種子が巨木にまで成長する不思議さ。その種類の多種多様さ。

 植物が成長するには、太陽の光と水、それと土の中の成分がどんなものかは知らないが、そうした材料に加えて、目に見えない成長力というものがあるようだ。この不可思議な力は、謎としか思えないような方法で種子の中に組み込まれているらしい。

 光合成というのがまた不思議な現象だ。太陽の光と水と、空気中の二酸化炭素を利用して、葉っぱでデンプンをつくる。剪定した葉っぱの切り口を何度眺めてもその仕組みはわからない。

 デンプンというのは米や小麦の主な成分だから、この植物の光合成の力がなかったら、人間も動物も文明さえも、何一つ存在することは出来なかった。植物がここに至るまでは、何億年もの時間が必要だったというのは、きっとそうなのだろう。

 そのうちAIが進歩すれば、光合成の仕組みを解明して、植物の葉っぱ1枚がやっていることを工場でもできるようになるだろうか。そんな未来の科学技術が実現できるかもしれないことを、現に植物たちは行っている。