一匹増えていた

  近所の空き家のところにいつの間にか子猫が4匹出入りしていて、母猫の姿が見当たらなかったから捨て猫だと思うが、夜の暗がりでたまに餌を与えることがあった。

 どうやら自分以外にも餌を与えている人がいるようで、女房の話によれば、地域猫活動をしている近所のおばさんらしい。だからあまり余計なことはするなと言われていたが、つい気になって、夕食後にわざわざ子猫たちに会いに行ったりしていた。

 半年、一年が経つうちに子猫たちはすっかり大きくなり、それぞれの性格もはっきりしてきた。茶虎のオスは人懐こく、ブチのメスは気まぐれな甘えっ子、この2匹が一番甘えてくる。もう1匹ブチがいて、これはつかず離れずといった感じで印象が薄い。もう1匹白黒のメスがいて、これは決してなつかない。

 気がつけば1匹、2匹と順番に耳に三角の切れ目が入っていたのは、地域猫活動のおばさんが去勢手術、もしくは避妊手術を受けに連れて行っていたのだろう。

 ある時、いつもの暗がりに餌を置いて、帰りがけにふと振り向いてみると、餌を食べている猫の数が5匹になっている。あれっと思ってよく見てみると、1匹だけシルエットが明らかに違う。大きさはよく似ているが、頭が猫より小さめでとがっていて、尻尾も低く垂れている感じだ。

 もっとよく見てみようと思って近づくと、そいつだけ慌てて逃げていった。その時何となくハクビシンという名が頭に浮かんだが、生で見るのは初めてだった。うわさは聞いたことがあるが、こんな大都会の下町の住宅街に、本当にハクビシンが住んでいるんだなど感心した。

 猫とハクビシンが仲良しだという話は聞いたことがなかったから、たまたまこ捨て猫たちが餌に夢中で鈍感だったのか、それとも人知れず一緒に遊んだりしているのかは知らないが、あれじゃとても人慣れはしないだろうし、比較的に見ても猫の方がずっと可愛い生き物だなと改めて思った次第です。